余熱

街路樹はもう朱く染まっていて
僕一人だけが取り残されたみたいだ
君はもう此処にいなくて 僕ももう帰るだけで良いのに
離れられなくて

ひどく寂しいよ その笑顔が無いと
つないでいた手のひらも幻だった気がして
とりあえず手にしていたコーヒーの香りじゃ
とても誤魔化せないけど わかりきっていたこと

その優しい声を 記憶の中でなぞってみると
今もここにいるような気がしてきて
冷たい風が 僕を追いやるように音を立てると
そろそろ帰りを知らせてくれる頃

この夜はもう 煌めきを手に入れて
雑踏のサラウンドで時間を止めようとしていて
僕はただ眺めているだけ 別に用があるわけじゃないのに
何もできないでいる

ひたすら繰り返しで 君といたことを思い出して
何を送りも 受け取りもしない自己満足で
時間は止まらなくて 締め出すように針を回した
どうしようもない子供みたいに 我儘な僕も片付けてくれ

その優しい声を 記憶の中でなぞってみると
行き場を無くした熱に浮かんだような感覚が残るだけ
君は此処にいなくて あとはただ帰るだけ
今日はもうフィナーレを迎えていた 君の「おやすみ」で

(Lyrics by Toji)